Mar 19, 2013

ブック・レビュー「黙示」真山仁


読んだ本を頭の中にある程度定着させるには、書くこと!らしい。
ということは、ブログにすることでもオッケーじゃないか!?
ということで、そろそろ、自分の為にもブックレビューをブログでもどんどんやっていきたいと思います。
と言っても、これまでも読んだ本からシェアしてきましたから、特に真新しいものではないですけどね・・・・・

さて、今回は真山仁の「黙示」。
ハゲタカから真山さんの本はほとんど読んできました。
そして、こちらの新刊も、予約注文、即ゲット!!

こちら、たまたまこの前に読んでいた短篇集「プライド」の一作の続きとなっている。(そいういった情報は見当たらないのだが、登場人物からいっても間違えない)
テーマは、日本農業。
農薬、GMO(GM作物)、TPP等のかなりタイムリーなトピックが扱われている。

食糧自給率が非常に低い国、日本。(そもそも、この「食糧自給率」にも色んなカラクリがあるのだが・・・)
そんな日本がどのように自国民のための食糧を確保していくかは、人口増加が止まらない世界にあって死活問題であることには間違えない。(資源にも同じことが言える。)
しかし、私の様な一般市民は、あまり正確な情報を持っていないのが事実。
その上に、「奥様迎合型」のメディアに踊らされ、正義感に満ちた、偏った見方を身につけてしまう。

主人公の平井は、農薬製造会社の研究員なのだが、ひょんな事からCSR室長へと移動になる。そこで、研究者だからこそ知っている農薬の安全性と危険性の間で葛藤する。
同じく、養蜂家の代田も、農薬反対の旗手として担ぎ上げられながら、農薬なしの農業など可能なのかという考えと葛藤しながら、共存への道を模索し始めるのである。

また、農水省キャリアである秋田は、世界が「密かに」直面している食糧危機を目の当たりにする。輸入に大きく依存している日本の食糧は、輸入がストップすることを想像できない。しかし、秋田が見たものは、まさにそれがあり得るどころか、「いつに起こるのか」という問題であった。

そして、最後にはGMO(遺伝子組み換え作物)への話は展開していく。

個人的には、平井と代田の葛藤がとても分かるような気持ちがした。
理想と現実の間というと、あまりにも陳腐であるが、その大切さに目を向ける人は少ないのではないだろうか。
前述した「奥様迎合型」という言葉は私が勝手に作ったのだが、代田の周りにもそいう登場人物が描かれている。とにかく、正義感あふれる感じの報道をグイグイ押していくメディアは今でもあるのではないか。お茶の間の奥様たちは、お昼のニュースなどでこういった報道を見て、ネットで調べ、あたかも世の中の不条理を暴いてやったという感覚になる。
まあ、言い過ぎかもしれないが、そういった報道には気をつけたい。

話が逸れてしまったが、「理想と現実」は冷静に現実を見ているからこそ起こることではないかと思う。メリットとデメリットを世の中の殆どの物事は持っている。全てが悪のものなど、淘汰されていく(と信じたい。)
しかし、何かしらのゴールに向かわないことには、単なる煩悩で終わってしまう。そうならないためにも、情報の収集・取捨選択・整理が大切なのだろう。

日本の農業には何が必要なのか。
本作品が答えを提示していると思ってはいけない。
飽くまで、問題提起だろう。実際に、本の終わり方もそのようになっている。

我々日本人は、本気になって今後の国家のあり方について考えないといけないのではないか。
エネルギー資源は電力問題もあり、かなりの注目を集めている。
しかし、人間に直接のエネルギーを供給する食糧の問題は見過ごされがちである。
この問題へもっと目を向け、冷静に判断できる力をつけていく必要を強く感じた。

もう一点感じたことは、「官僚は国の土となれ」という言葉である。
最近、仕事上でも官僚の力の大きさというものを感じている。
そして、それは彼らが持っているポテンシャルということも言えるのかと。
秋田に与えられたこの訓示は、本当にキャリア官僚の方々には持っていて欲しい。
一般市民には見られないが、彼らの仕事なしには、本当に国は回らない。
結局、テレビで物事を成し遂げている人というのは、かなりの部分で官僚によって支えられている。陽の目を見ないが、それでも社会では大きな権限をもっているし、社会の仕組みを作っているのは彼らなのだから。

私自身何ができるかということも、今後もっと問わなくてはと思わされた。

やはり、真山作品は深いな。

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